北海道に移住した30歳のおどり

深川からはじめていきます。

雪降るなか、ゆく(day92)

雪道の運転がこわい。

 

そもそも車の運転が得意なわけじゃないので、路肩に雪が積まれて車線が狭くなった中、車の横を抜けたりすれ違ったりする時は「ぶつかりませぬように」と毎回ドキドキするし、もしスリップして横滑りしてしまったら...と勝手に想像して気持ちが滅入る。

今朝もガソリンスタンドから勢いよく出てきた車が後輪を思いきり横滑りさせている様を見て

 うわっ、と小さい声が出た。

 

とはいえ北海道に住む以上、雪道の運転は避けて通れず。これからやってくる長い冬、雪道を転がしてゆくことは日常の一部であるだろう。

 

午後5時。雪は降っていないが、前日から積もった雪で地面は凍って、その上に薄っすらと白雪をまとっている。

 

意を決して車に乗り込む。目指すは滝川、25kmの雪道。

 

車の中で聴くのはオードリーのオールナイトニッポン

若林さんの緻密で、光景が頭に浮かぶような情景描写に必ずオチをつける話術の妙と、春日さんの常識から少し外れたプライベートでの言動を、あたかも普通のように話す(勿論良い意味での)変態さ。2人のフリートークの面白さがギュッと凝縮された番組である。

 

まだ2人が売れていなかった頃、春日さんの住むアパートにお客さんを入れてトークライブをおこなっていたそうだ。キャパは10人。今のオードリーの人気ぶりを考えると夢と思えるような話である。

若林さんは、当時春日さんがトークを一切考えてこないので毎回7〜8個のネタを用意した上でトークライブに臨むのが大変だったと。今放送しているオールナイトニッポンでも、毎回フリートークのネタや話の展開を考えてから臨んでいるということを話していた。

 

春日さんも、ラジオのフリートークでは内容を箇条書きにしたメモを用意して話しており、番組で若林さんが「春日は持ってきたメモを読むだけだから、俺は相槌しか打てない」といじっていた。

 

これだけ話術の巧みな2人でも、前もって話の構成を考えてイメージした上で本番に臨んでいる。自分達自身の経験を語っているのだから、ただ番組から用意された台本を読むだけでは成立しないのだ。

 

若林さんはM-1などの大舞台で力を発揮することについて、ゴルフになぞらえて「出たとこ勝負」と表現した。ゴルフのショットは大幅にスライスしたり或いは狙い通り真っ直ぐ飛んだりするけれど、結局真っ直ぐ飛んだ理由は分からない。日々の地道な努力(つまり練習)を積み重ねる事で真っ直ぐ飛ぶ可能性を高めていくことしかできないと。

 

車を運転しながら、ふと自分にはあらゆる場面で事前準備が足りないなと思った。「出たとこ勝負」で、打席に入ってバットを振ってふってふりまくればいつかは当たるそれで良いのだと思っている節がある。ではなくて、打席に入る前からバッティングフォームのどこを気をつけるのか確認して、相手投手がどんな球種を持っているか、どんな攻め方でくるかをある程度想定した上で打席に立たないと、ボールを捉える可能性(打率)は上がってこない。

 

そもそも、試合に出る前の練習の時点でイメージすることができていなかったと気づいた。だから俺は中学時代の野球部で、相手投手が投げてくる変化球に驚くほど対応できなかった。カーブ投げてきたらどうにか合わせてボテボテのショートゴロ。

ストレートとスローボールという2種類の球種のみが許される小学校の少年野球である程度打てていたから何とかなるという過信を引きずっていたから。

中学時代鳴かず飛ばずの成績だった理由が今になって腑に落ちた。

高校時代の軽音部だってそうだ。日々の練習は怠けて学園祭のステージの上であたふた、弾けなくなって途中ギターをアンプに立て掛けて意味の分からない踊りをおどる。ギターがアンプからずり落ちてネックがへこむ。ステージに立つという事を理解できていなかったから。

経験を積む価値は、常に準備を重ねて蓄積するということ。

 

オードリーのラジオを聴いて、30歳になってようやく気がついた。

 

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ホーマックで車用のスノーブラシを買う。

その後バス停へ。

あれだけ怖がっていた雪道は特に危ない思いをすることなく目的地にたどり着いた。

前の車との車間距離をしっかり取れば良い。早めにウインカーを上げて速度を緩める。大丈夫。

 

ようやく30歳になってこんなことに気づいた、なんて恥ずかしくて情けない話だけど、腑に落ちてなんだかすっとした気持ちでもある。

 

 

夜の真っ暗な空から大粒の雪が降りそそぐ。明日にはもっと積もるだろう。

ふっと白い息を吐き出して、バスに乗り込んだ。